徒然、草ァ

限界薬学生物語

0003 お菓子作り

普段すごい料理するわけでもない、けどできないわけでもない。時間があればちょっと凝った美味しいものでも作って自分にご褒美あげたい。そんな男がいる。

 

ある日突然美味しいお菓子が食べたくなる。レシピを調べてみるとなかなか手順がややこしい、けど幸い必要な道具は全部ありそうなので、お店へ買い出しに向かう。

 

生鮮食品売り場や調味料売り場、乾物売り場とあちこちに行っては、レシピ通りの物を頑張って探す。中には聞きなれないスパイスもあったりするけど、ネットに頼りながらなんとかそれらしい物をカゴにいれる。

 

家に帰って手を洗い、キッチンでさぁ、調理を始めよう。意気揚々、もう口の中は頭の中で完成したご褒美の想像でヨダレが出てくる。

 

慣れない手つきで順番に材料を混ぜていく。けれどお菓子作りはなかなか複雑で、早すぎず、遅すぎず正しいタイミングで正しい材料たちを混ぜ合わせなきゃ行けない。時には分量を何回かに分けて慎重に加えなければいけない。そんな料理初心者には爆弾処理のように複雑に感じる工程をこなしていって、どこかで気づく。

 

あれ、これなんか違くない?

生地、なんか写真みたいにならないよ?

 

レシピを読み返す。

とんでもない間違いに気づく。

 

ああ、もうこれダメじゃん。

この生地もうお菓子にはならないじゃん。

オーブン予熱してたけど、もうこれ焼いても何にもならないじゃん。

 

けど、せっかくだから超美味しくなって欲しいと、こだわって、ちょっと高い、良い材料を丁寧に量って混ぜ合わせた生地もどき。

捨てるのには抵抗がある。

 

食べれるわけではないし、なにかできるわけではないけど、捨てるのはもったいない。

想像していた美味しいお菓子と入ってるものは全く同じなんだから。

期待が高かっただけに、悲しみも大きくて、ただ目の前の何かになるべくして一生懸命作ってきた、何にもなれない塊を見つめてため息をつく。

 

 

 

僕の人生ってちょうど、そんな感じ。